第8章 暗部時代のカカシ先輩
最後に涙を流した時は、
暗部を去るカカシ先輩と
お別れをする日だった。
「お前にやるよ、ほら」
そう言ってくれた狐のお面。
突然退任する事を告げられて、心の準備が全然出来てなくて、暗部のくせに子供みたいに涙を流して泣いていた。
私がポロポロと涙を零していると、ほんの少しの短い時間、カカシ先輩が優しく抱きしめてくれた。
「、泣くなよ。無茶はするな。自分を大事にしろよ。」
そう言って頭を優しく撫でてくれた。
無口でクールなカカシ先輩が、まさかこんな風に慰めてくれるなんて、本当に信じられなくて凄く驚いた。
あの時、カカシ先輩の温もりが暖かくて、抱きしめてくれた事が嬉しくて、今でも私の心に深く刻まれている。
皆とは違い、私にだけ特別な扱いをしてくれる事に、ずっと気がついていた。分かっていた。
ずっと信じられなくて、
違う、勘違いするなって
自分にいつも言い聞かせていたけれど、
私だけ特別なんだって思うと嬉しくて、つい、顔が綻んでいた。
カカシ先輩が去ってから、
今まで学んだ事を絶対無駄にしないでおこう、後輩が出来たら必ず伝えていこうと、心に決めていた。
誇りを持って全てを暗部に捧げよう。そうすれば自ずと結果は付いてくる。
8年間がむしゃらに働いてきたが、
暗部の仕事を褒めてくれる人は誰一人いない。
むしろ敬遠されていたぐらいだ。
でも、誰かがしないといけない事なら、私がやろうと決めていた。
一番辛かった任務は、
親友を暗殺することだった。
親友は自決した。
自決に追い込んだのは私だ。
同じ暗部で、親友だと思っていた人間は、実は里外のスパイで、何人もの仲間を殺した暗殺者だった。私が追い込み役として選ばれ、後を追った。
任務を終えた後、
涙は流れなかった。
感情を殺すのが
とても上手になっていたらしい。
その日暗部を辞めようと思ってお面を取った時、狐のカオを見た。あの日のカカシ先輩を思い出していた。
決して誇りを忘れない
自分はプロだということ
奢りを持たず貪欲に学び続けること
( そして 自分を信じること )
目を閉じて、
ゆっくり大きく深呼吸をして、
もう一度お面をつけ、里に帰った。
何度も挫けそうでも、
このお面を見れば頑張れた。
カカシ先輩を心から尊敬し感謝の気持ちでいっぱいだ。