第29章 お参り
「五代目様!まぁまぁ、綱手様がまさか、来られなんて、びっくりしましたわぁ。」
ヌイさんのお母さんが綱手様に再会され、驚いておられる。コネもお面を外して皆で一礼した。
「さあさあ!お上がりください!どうぞどうぞ、そんなトコにいてへんで!」
私達は、仏壇の前に正座し一礼する。
持ってきたお供え物を仏壇の前に供え、ヌイさんのお母さんに、日持ちするお菓子ですので、と伝えお供えした。
ロウソクに火を灯し、その火で線香にも火を灯し、全員で目を閉じて、合掌する。
あの日を思い出す…それでもどんなに過去を悔やんでも、戻らない……ならばどうか…安らかにお眠り下さい。そう心から願い、目を開けた。
綱手様がロウソクの火を手であおいで消し、再び一礼してから下がった。
ヌイさんのお母さんと世間話を少しして、お別れをした。
そのとき、私だけ声をかけられ、振り返れば穏やかな表情を浮かべるヌイさんのお母さんがいる。
「ちゃん、ホンマに毎月毎月、来てくれてありがとうな。息子も喜んでるよ。でもな、もう来月からは皆と同じ一年にいっぺんでええから。気を張らんで、気楽においで。もう大丈夫やから、ワシは。」
「お気遣い、ありがとうございます。私は義務だとは思っていませんよ。大丈夫です。だけど、そうですね!また前みたいに料理一緒に作りましょう?また来ますね。どうぞ、お元気で。」
「ありがとうな!またな、待ってるわ。」
優しい会話をして、笑顔で別れの挨拶をして、ドアを閉めた。