第29章 お参り
「「先輩!」」
遠くで笑った後輩達が見えて、少しだけ行って来ます、とその場から離れた。
ウサとキネが、お面を外して笑った顔を見せてくれている。
あの事件の現場を遭遇して、綱手様とシズク様を、病院へ連れて行ってもらった二人だ。
「さっき、小耳に挟んだんですけど、護衛暗部じゃなくなったんですね。」
今話を降ってきたウサは、私より一つ下の、黒い髪の毛を一つ括りにした、目が大きい綺麗な女の子だ。
「無職だけどねー、暇になるわー。」
乾いた笑いをしていたが、ウサは何故か嬉しそうな顔をしている。
「実は、私とキネ、暗部を辞めるんです。近々に。」
「え!!?……どうして?」
「私、結婚するんです。お腹にも赤ちゃんが宿ってるので。」
「そ、そうなの⁈おめでとう!!ビックリだよ、え、じゃあキネは?」
キネは狐に藍色のラインが入ったお面をつけた元気いっぱいで明るく、赤みが強い髪の色をした笑った顔がチャーミングな二つ下の女の子だ。
「私も同じく、同期の方と結婚するんです。だから私達、暇になるんですよ。これからプライベートで交流したりしませんか?ベトレイの事で、先輩は、一切交流を絶ったような生活をされていたので……」
少し気まずそうな表情を浮かべながら、誘ってくれた後輩を、びっくりして見つめた。
私はほんの少し、闇を灯しながら、振り返った。
「そうだね、あの事件のあとは、全部絶つように過ごしていたね……たしかに…特に友人という存在は……避けてたよ。ごめん、うん、ありがとう気を使ってもらって。よろしく、これから。」
後輩二人を見つめて、自分は如何に小さな世界に閉じこもっていたんだろう……そう感じる。
また後日ランチにでも行こうという話になり、後輩と別れた。