第81章 見れないっての。
「せ・・・ぱ・・・」
高尾「・・・え・・?」
「せん・・・ぱ・・・い・・・」
高尾「っ!雅・・・」
私の名前を最後に、沈黙が続いた。
唇にも何も感触は感じなかったので
私はゆっくり目を開いた。
すると、押し倒しの体型は変わってなかったけど、
高尾君は私から離れていた。
「高尾君・・・?」
高尾「どっち?」
「え・・・」
高尾「今吉さん?それとも日向さん?どっちだよ・・・」
「た、かお君・・・?何のこと・・・?」
高尾「とぼけんじゃねぇよ・・・」
高尾君の声は震えていた。
でも、私を怒鳴ることはなかった。ただ静かに、何かを堪えるような声だった。
高尾「今、雅。先輩って言ったよな?」
「え・・・?」
私そんなこと言ったの?
だから今吉先輩か日向先輩かって・・・。
「ごめん高尾君、私、確かに先輩って言ったのかもしれないけど・・・その、でてきた言葉がそれだっただけというか・・・。」
高尾「は、はぁ?」
「意識、しないででてきちゃった。どっちの先輩かわからない・・・。」
高尾「なんだよそれ・・・」
「それに私の先輩って一人じゃないし・・・。高校の時の諏佐先輩や若松先輩だっている。だから、今吉先輩や日向先輩に限ったわけじゃないと思う・・・」
私がそう言うと、さきほどまでの冷たい高尾君の顔が、いつもの高尾君の顔に戻った。
ぽかんとしてて、目を見開いてる。口も半分あいてるし・・・汗
「高尾君・・・?」
高尾「プッ」
「え!?」
高尾「アッハハハハハハ!!!やっぱ雅さいこー!アッハハハ」
「え、ちょ!?た、高尾君!?」
馬鹿にされたような、からかわれたような。
高尾君は私の上から退き、お腹を抱えながら笑った。
でも、いつもの高尾君だ。
「も、もう!笑わないでよ!」
高尾「やーごめんって。あーでもそっか。うん、そうだよな。じゃぁまだ脈あるよなーうんうん」
「? な、何一人で喋ってるの?」
高尾「頭逝かれたの?みたいな感じで聞いてくんのやめてくれる笑?」
「え、やっ、そういう訳じゃないけど・・・」
高尾「・・・ごめん。」