第65章 イヴとココロ
日向「病気になる前はバスケをやってたらしい。でも脚が動かなくなって、大好きなバスケもできなくなったんだ。そこで木吉は手だけでもいいからバスケをやろうってボールもってきやがった。」
「フフッ 木吉さんはそういう人ですよね」
日向「あぶねぇからやめろって俺は言ったけどな。でも少年はやるって言って目ぇ輝かせてたぜ。最終的には俺も参加して楽しんじまったけど」
「先輩らしいです」
日向「・・・でもな。バスケ終わったときに、あいつ、こそっと俺だけに言ったんだ。」
重い口を無理やり開けるように先輩は言った。
日向「僕の余命は後五日だって。」
「え・・・」
日向「驚いた。けど同時に、こいつ強ぇと思った。死ぬことを知りながらこうも笑顔で生きている。俺には無理だ。・・・なんも声もかけれねぇまま、俺は帰った。そんで昨日親父から電話があったんだ。少年が死んだって。」
「っ・・・」
涙がこみあげてくるのがわかる。
目の縁が熱い。でも私は必死にぐっとこらえた。
日向「俺はなんもできなかったけど、親父の話だと、その前の日に少年が親父に言ったらしい。バスケしてくれたお兄ちゃん達にありがとう。楽しかったって言っといてって。・・・たった一度やっただけなのによ。あいつにとってはすごく嬉しかったんだなって思うと・・・」
先輩の声がかすかに震えてきた。
日向「そんなやつの命を・・・俺は少しでも長くしてやりてぇ。子供に限らず、大人も老人も。俺は助けたいんだ。少しでもこの世界に生まれて良かったって思えるように・・・」
「先輩っ・・・・。」