第63章 月の王子と星の姫。
クリストフ「いってみよ、ナターシャ」
ナターシャ「・・・あなたが好きよ。愛してる。ずっと、ずっと見ていたわ。」
その時、ナターシャの目からは雫がぽろぽろと落ちていた。
怖いのではない。彼女は今、最高の気分だ。
姿をみれた。自分の感情を言えた。
ああクリストフ、私はそれだけで満たされてしまうの。
強欲なのか、貪欲なのか、分からないでしょう?
そうね、私も自分の事が分からないわクリストフ。
あなたの声が聴きたい。あなたに教えてほしい。
ナターシャ「聞かせてクリストフ、あなたの姿で、あなたの声で。さぁ。」
クリストフ「・・・私もお前を見ていたよ。お前が私を見る前からずっと、ね」
互いの額をくっつけ合う。
ナターシャの涙がつないだ手にも落ちた。
クリストフ「お前がこの街にいつも果物を売りに来ては帰り、また売りに来ては帰り。たった一人、孤独な身というのも関わらず、賢明なお前の姿を、この城からずっと見ていた。」
ナターシャ「なら最初から声をかけてくれたら良かったのに。」
クリストフ「甘やかすのは嫌いなんでね」
ナターシャ「金貨はくれるのによく言うわ。」
気が付くと二人は笑っていた。
夜が明けるまで、ずっとずっと
二人は笑いあったのだ。