第63章 月の王子と星の姫。
ナターシャ「王子・・・?」
この街の王子が。
なぜ。私を呼んだの。私の手をとったの。
王子「ああナターシャ。いつもの場所で待ってろと言ったであろうに、そんなに楽しみであったか」
ナターシャ「あっ」
輝く衣装を身に纏った王子は顔をあげた。
ふわりとした金髪に白い肌。
まさか・・・
ナターシャ「クリストフ・・・なの?」
クリストフ「王子の顔は分かるのに、名前は知らなかったのだな」
ナターシャ「そりゃそうよ。私は離れた村に住んでいるもの。」
話ながらも、ナターシャの頭はぐるぐると混乱している。
王子が、あのクリストフなの・・・?
今まで私の果物を買いに来てくれてたのは
王子なの・・・?
ナターシャが考えている隙に、クリストフは顔を近づけた。
思わず一歩下がるナターシャ。だがクリストフは構わずと今度は両手をぎゅっと掴んだ。
クリストフ「それで、私の本当の姿をみて、ご感想は?」
彼が微笑んだとき、ナターシャはようやく確信した。
あぁ、この人は間違いなくクリストフだ、と。
その青い瞳、おそらく微笑むときに目じりが下がるのであろうとみていたが、本当だったとは。
その瞳、美しい夜空の色をした瞳、ずっと見ていたい。
ナターシャ「感想よりも、聞いてほしいことがあるの。」
クリストフ「なんだ」
ナターシャ「あなたの姿を見たときに、告げようと思っていたわ。ずっと、ずっと前から。そう決意していたの」