第63章 月の王子と星の姫。
あれからいくつか日が経った。
ナターシャは果物を売り続ける。
今日は洋梨だ。いつもと何も変わらない。
ただ変わったのは、あれから毎日、
あの白い布をまいた男が果物を求め
買いに来ることだ。
そして今日も少し多めに金をおいていく。そうだろう。
いつも疑問に思ったいたナターシャだったが、
今日こそはと声をかけた。
ナターシャ「あの、白の方。」
男「なんだ。白の方とは私の事か」
ナターシャ「はい。名前が分からないので」
男はそうかと言ってナターシャを見つめる。
男「それで、なんのようだ村娘よ」
ナターシャ「なぜ、この村娘の果物をいつも買ってくださるのですか?」
男「なんだ、買ってはならぬのか。」
ナターシャ「いえ、買っていただいて光栄なのです。あなたのおかげで私の暮らしはとても裕福と言えるでしょう。食糧も水も、尽きることがないのです。」
男の目じりが少し下がった気がした。
男「では何故そのようなことを聞く。」
ナターシャ「・・・それは」
ナターシャは言葉がつまってしまった。
男「困ることではない。村娘、お前はそのままでいい」
ナターシャ「・・・ありがとうございます。」
そしてまた男は果物を買う。元値より高く。
男「名を。」
ナターシャ「え?」
男「名をなんという村娘」
ナターシャ「ナターシャといいます。白の方、私もあなたの名を聞いてもよろしいでしょうか」
男「・・・クリストフだ。」