第2章 奪われたもの
小走りの弟に手を引かれて、大通りの方へと足を進める。
近所の人たちも調査兵団の帰還を見ようと家から出てきていた。
「あらー、ラウラちゃん、エリクくん、いつも仲がいいわね~。調査兵団を見に行くの?」
斜向かいの家のおばさんが玄関先に立っていて、声をかけてくれる。
「そうだよ!英雄たちの凱旋を見に行くんだ!かっこいいんだ!」
元気いっぱいに答えるエリクの姿が微笑ましい。
男の子はみんな調査兵団に憧れるのかな?確かに、自分の命を投げ打って人類のために戦うっていう勇気はすごいと思う。
私には到底マネできない。それに、私にはやりたい事がハッキリと決まっているから、兵士になるという選択肢は無いのだ。
大通りに出ると、そこにはもう大勢の人が集まっていて、背の低い私たちではとてもその人垣の向こう側を見ることができなかった。
「姉さん、見えないよー!」
「大丈夫エリク、私も見えないから!」
背の小さい姉弟でピョンピョンと無駄にあがいてみたものの、やはりあまり成果は無い。
これが父さんとか兄さんだったら違うのだろうな。
背の高い二人だったら、少し背伸びをすれば人々の頭を超えて、その向こう側を歩く調査兵団の姿を見ることができただろうに。
私と弟は、小柄な母さん似だから、同年代の子に比べると身長は高くないし身体も細い。
細身だけれど背の高い父さんに似ていれば、私だってもっとスラリとした青少年になっていたはずだ。まぁ、言っても仕方のないことだけれど。