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【進撃の巨人/リヴァイ】君が描くその先に

第8章  出発前夜


 待合室に行くと、やはり今日も誰もいなかった。
 ここは、名前のとおり待ち合わせをする時に少しだけ使う部屋であるが、今までここに人がいたところを見たことがない。

 待ち合わせと言っても大体が宿舎内で落ち合ってしまうので、ここで待つ必要がないのだ。
 男女が待ち合わせをする場合には、こんなにおおっぴらなところで待ち合わせをしないので、こちらもやはり使用することはない。

 ちなみに宿舎の構造としては、共同の玄関を入って左に進めば男性宿舎、右が女性宿舎となっていて、ロの字型の3階建ての建物になっている。
 ぐるりと繋がる廊下を歩いていれば、また玄関へと戻ってくる。
 私がいつも行く中庭は、その廊下で囲まれた、男性宿舎と女性宿舎の真ん中にある小さな空間だった。

 ランプに一番近い定位置の席に座って、私はカバンからスケッチブックを2冊取り出した。
 1冊は練習用としてとりとめもなくスケッチをしているもので、もう一冊は実家から持ち出すことのできた例のスケッチブックだ。

 私は、ナナバさんから聞いた遺書の話を考えてみた。
 やっぱりさっき思ったとおり、私には遺書をのこす相手はいない。それに、自分は文章をのこす…というガラでも無いように思う。
 私に書けるもの…。だったらいっそ、絵を描いてみればいいのかもしれない。うん、そうだ。私には文章よりも絵の方が合っている。

 私は、練習用のスケッチブックを開いて、描きかけだった絵を完成させることにした。
 何かのメッセージになるような絵じゃない。
 だけど、「やり残さない」というナナバさんの言葉にならって、私も描き残していかないことにしたのだ。

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