第37章 反撃開始
それを聞いてアルミンが頷く。ミカサもホッとした様子で、こわばっていた表情を少しだけ緩めたのだった。そこでハンジ分隊長がパン、と手を打つ。
「ということでー!この中の誰かにエレンとヒストリアの身代わり役になってもらおうと思う。エレン役は君にやってもらいたいんだけど、どうだろう?」
「エッ!?」
指名されたのはジャンで、彼はギョッとした顔をして立ち上がった。
「そんなっ、俺とエレンじゃ全然似てませんよっ」
ほとんど叫ぶようにして声をあげるジャンに、エレンも負けじと声を張り上げる。
「そうですよ!俺はこんな馬面じゃないです!」
「なんだとテメェ!!」
「やんのか!?」
突如として取っ組み合いを始めた二人に、アルミンが慌てて駆け寄って仲裁をしようとするがとても引き剥がすことができない。ここまで怒るということは、どちらも相当不満なのだろう。
だけど…分隊長のチョイスは結構適切なんじゃないかというのが、私の正直な感想だった。現にジャンはストヘス区における女型捕獲作戦の際にもエレン役を務めているし、憲兵団にも不審に思われなかった。確かに顔立ちは違うかもしれないけれど、背格好も同じくらいだし身体的な特徴は一致していると思う。
そうは思ったけれど、とりあえずこの騒動は収めなければならないだろう。呆れ顔をして見ている先輩方の横をすり抜けて二人の仲裁に入ろうとした、が、そんな私の横にいつの間にかリヴァイ兵長が立っていた。
「うるせぇ。いいから、やれ」
そう言って兵長がジロリと睨みをきかせると、エレンとジャンは途端に静かになって、「はいっ」と大きく返事をしたのだった。さすが兵長だ。