第36章 束の間の日常
団長からの伝令では、中央第一憲兵が私達の潜伏先を探り当てた可能性があるとのことだった。ただちにこの場を離れる必要がある。つまり「背後から刺される前に外へ行く」のだ。そして一方で、「背後から刺す奴を駆除する」必要もある。
「俺達はエレンとヒストリアを連れて、後から合流する」
「了解。それじゃあ私達はその間に準備を進めておくから。エルヴィンの作戦通り、よろしく頼むよ」
部屋にはハンジ班の先輩方も呼ばれていて、分隊長の言葉に先輩達は頷いている。私も同様だ。
「あぁ。…それと、すまねぇが、お前の班の内一人でいいから貸してくれねぇか。さすがに俺一人じゃ、ガキどもの面倒は見きれねぇからな」
兵長の言葉に、確かにその通りだなと今更ながら私も思った。
ここ最近は過酷な作戦が立て続けにあったせいで忘れかけていたけれど、104期生達はまた入団してから数ヶ月の新兵なのだ。本来だったら、まだまだ右も左も分からないで右往左往しているような段階の子達だ。
それが、否応なしにこんな過酷な状況に放り込まれてしまったせいで、ベテラン兵士のような働きを求められている。
「うん、じゃあラウラを残していくよ。ラウラ、リヴァイを助けてやってくれるかな?」
「はいっ」
私は大きく頷いて、敬礼をしたのだった。