第36章 　束の間の日常

「…っ！エレン！」

　たまらずにミカサが飛び出して行ってしまった。

「ミカサ、待って！」

　アルミンが慌ててその後を追うが、ミカサの速さにはとても追いつけない。

「オイオイ…何を勝手に動いていやがるアイツは」

　ため息をついて、兵長も立体機動装置のトリガーに指をかけると後を追った。


　結局エレンは自力では巨人の身体から出てくることができず、どうにかして皆でほじくり出したのだった。慎重に巨人の身体を切り裂いていったので、エレンの手足は切断されることなく無事であったが、その作業にかなりの時間を要してしまった。

　それからまた30分程休んで、先程よりも一層疲労の色を濃くしたエレンは3度目の巨人化に挑んだのだった。
　意識の混濁がみられ立ち上がることすら自力ではままならない状態の彼に、果たして巨人化ができるのだろうかと心配したが、案の定、次に現れた巨人は10ｍにも満たない不完全なもので、本体のエレン同様に自立ができなかった。

　ブルブルと震える身体を必死に保とうとしている様子が分かったが、すぐに力尽きてドオオと大きな音を立ててエレン巨人は倒れ込んでしまった。地面に這いつくばりながらも立ち上がろうと腕に力を込めているのが分かったけれど、かわいそうなくらい力が入らないのがありありと見て取れた。