第36章 束の間の日常
エレンから離れ過ぎず、なおかつ様子が正確に観察できる距離を保って立体機動装置で岩に取り付いている私の元に、リヴァイ兵長も同じようにして立体機動で飛んできた。
「おい、大丈夫か」
「兵長!問題ありません。それよりエレンが…」
「あぁ…完全に我を忘れていやがる。ハンジ、どうする?」
「…今近づくのは危険だ。体力を消耗するまで待とう。もしも落ち着きを取り戻したら、可能な限り実験を続ける」
「分かった」
それからしばらくの間、エレンは森の中の物を破壊しながら暴れ続けた。だが、ついに力尽きたようで、地面に倒れ込むとうなじから蒸気を吹いた。
ブシュウウと吹き出す蒸気に勢いはあったが、1回目の巨人化の時のようにその中からエレンが姿を現す様子は見られない。地面に倒れ伏したエレン巨人は苦しそうに身体をビクビクと痙攣させている。
それを見て、ハンジ分隊長は口元に手を当てて思案している様だった。
「自力では出られないのか…?でも、もう少しだけ待ってみよう。様子を観察するんだ」
分隊長の周囲には班員全てが集まっていたから、指示の伝達が漏れた訳ではない。だが…、