第36章 束の間の日常
そんな私の様子を心配してか、リヴァイ兵長は時折肩をポンポンと叩いてくれるのだった。
「おい、大丈夫か」
「は、はいっ、大丈夫です!」
そのタイミングが毎回絶妙で、その度に私は食い入るようにエレンを見つめてしまっていた自分に気づかされるのだった。
本当に兵長は部下のことをよく見てくださっている。兵長が声をかけてくださらなければ、きっと私はいつものように我を忘れて絵に熱中してしまっていただろう。
ちなみにモブリット副長もスケッチを担当してくれていて、私と副長とでエレンの様子を余すところなく観察していた。
1回目の巨人化では、いつもの15m級のエレン巨人が出現した。エレンの意識がはっきりと反映されているようで、片足で立つ・腕を振るなどの命令にも応えられたし、ロープや丸太を使って家まで建てることができた。
「すごい…。中身がエレンだということは分かっていますが、巨人が人間の言うことを聞いているなんて、不思議な感じです…」
私が思わずこぼした言葉に、ついさっき隣に飛んできた分隊長は頬を赤く染めて大きく頷く。
「うんうん、そうだよね!私もだよ!最っ高に滾るぜーっ」
分隊長の両目は宝石のようにキラキラしていて、今ご自分で仰られた通り最高に興奮しているのだということが分かる。
ハンジ分隊長は長年、巨人との意思疎通ができないか模索してきた。少し形は違ってしまったけれど、エレン巨人とはっきりと意思疎通が取れていることが嬉しくて仕方がないのだろう。