第36章 束の間の日常
「兵長…!?」
その言葉の意味が理解できなくて、私は涙を流しながら兵長の顔を見つめた。私の顔を見つめ返して、兵長はため息をつく。
「ところで、なぁ、ラウラ、つかぬことを聞くようだが、俺はお前からの返事をずっと待っているんだが」
「え?」
兵長は気まずそうに私から視線を逸らしたけれど、腕をほどくことはしない。
「お前の気持ちを、教えてくれないか」
「………あ!」
なんということだろうか…。私は、自分の中だけで納得してしまっていて、あろうことかちゃんと兵長にお返事をしていなかった。ど、どこまで間抜けなんだ私は…。
「すまない、お前を泣かせるつもりは無かったんだ。ただ、ケジメをきちんとつけておきたくてな」
コツンと額を押し当てられて、耳元で言われた言葉に、涙なんか引っ込んでしまった。
「俺はお前が好きだ。…お前は俺をどう思っている?まぁ、ここまで色々やっちまった後で言うことじゃねぇとは思うが」
至近距離でじっと向けられた視線と正面からかち合う。私はゴクリと喉を鳴らすと、覚悟を決めた。