第36章 束の間の日常
数時間かけて明日の実験計画を入念に練り上げた頃には、104期達が腕によりをかけて作った夕食が出来上がっていた。
見張り役のミカサとコニーを除いた全員がリビングに集まって、一同に食卓を囲んだのだった。
メニューはいつもと代わり映えのしないパンとスープだけだったが、こんなに大勢で揃って食事をするのなんて久しぶりのことなので、それだけで心が明るくなった。またこんな日常が戻ってくるなんて。
皆が思い思いに食事を進める中、私の隣に座っているリヴァイ兵長は相変わらず人前で食事を摂ることはせず、飲み物だけを飲み続けていた。そんな兵長に私はこっそりと耳打ちをする。
「兵長、後でお部屋にお持ちしますね」
「…あぁ、頼む」
兵長は短い返事をして、小さく頷いた。
「あっ、何だい?二人で内緒話なんかして、あやしーなー!」
夕方に見せた弱気な姿などすっかりどこかに吹き飛んでしまったハンジ分隊長が、ニヤニヤと笑いながら声をかけてくる。何だかすごく楽しそうだ。
だがそうは言っても、分隊長は意地悪をしようとしている訳ではない。分隊長は以前、兵長が調査兵団内で一番仲良くしているのは自分なのだとおっしゃっていたから、友人として兵長のことが気になって仕方がないのだろう。