第7章 穏やかな日
その後も色々な話をして、どこでどうやってそんな流れになったのか覚えていないけれど、私とライデンがまだ4~5歳くらいの時の話になった。
おばさんは、遠い日を懐かしむような目をして言った。
「あの頃から、ラウラちゃんはいつでもスケッチブックを持ち歩いていたわよねぇ。
それで近所のちょっと意地悪な女の子、ホラ…名前なんて言ったっけ?あの子がスケッチブックを持って行っちゃったりしてね。
でもその度にライデンがその子からスケッチブックを取り返してきては、ラウラちゃんのところに持って行っていたわねぇ…。まるでナイトみたいに…懐かしいわぁ…」
「そんなこともありましたね」
と私が笑うと、すかさずライデンがつっこみを入れる。
「ありましたねぇ、じゃねーよ。感謝の気持ちが薄いぞ!あの子いっつも怒ってて、スケッチブック取り返すのすっげー怖かったんだからな!」
「あはは、ありがとうライデン。でも、何でいつもスケッチブック持って行っちゃうんだろうね?あの子。」
「さぁな。ラウラが可愛いから嫉妬してたんじゃねーの?」
ライデンがサラリと言ってのけたセリフに、私は少し目を丸くした。
おや?可愛いだなんて、そんなことが言えるようになったんだ。ライデン、大人になったんだなぁ。
「そんなことないよ。あの子の方が、ずっと可愛かった。…あ!もしかしてあの子も絵が描きたかったとか?!」
そう返事をした途端、ライデンの眉がシュンと下がるのが見えて、その横でおばさんがニヤニヤと笑った。
なんだか、昔どこかで同じような光景をみたことがあるような気がする。いつのことだったろう。
その後も様々な話をしたせいで、いつのまにかそんなことも忘れてしまった。