第6章 壁外調査に向けて
「ラウラは真面目なんだね」
駆け寄っていった私にニコニコと眩しい笑顔を向けてくるナナバさんに見つめられて、私はなんだか頬が熱くなってしまった。
「いえ、そんなことは…」
そう言って俯いてしまったから、ナナバさんがどんな表情をしていたのかは分からなかったけれど、「ふふふ」と小さな声が聞こえたような気がしたから、もしかしたら笑っていたのかもしれない。
私たちは連れ立って食堂に行くと、配膳の列に並んで夕食を受け取った。
メニューは、役職によって少し違う。
団長や兵長、分隊長なんかの幹部クラスには、小さいけれどベーコンなどが付けられるみたいだ。
でも、肉はとても貴重なものなので平兵士たちまでは配給されない。私たちはもっぱら、スープとパン、それに時々果物なんかが付くのがいつものメニューだった。
平兵士にも経験の長い短いはあるけれど、そこまではあまり区別されていなくて、ナナバさんのような中堅兵士であっても、食事のメニューは新兵の私と同じである。
配膳されたスープとパンをトレーに乗せて、空いている席に向かい合わせにして座った。
「さ、食べようか。いただきます」
ぱん、と音は立てないものの、ナナバさんがその白い手を合わせて、美しく挨拶をした。
「いただきます」
ナナバさんにならって私も手を合わせると、小さい声で挨拶をした。
周囲は、私たちと同じく、陣形訓練を終えて夕食を食べに来た兵士たちでごった返している。
ザワザワと様々な声が聞こえてくる中で、不意にナナバさんの隣の席に座ってきた男性兵士がいた。
「よう、お疲れ。俺もまぜてくれや」
「ゲルガー」
そう呼ばれた男性兵士は、ナナバさんと同じように白い肌をしていて、淡い金色の髪を特徴的な形にセットしていた。
少し眠たそうな目をしていたけれど、私の顔を見てニカッと笑いかけてくる。
「おっ!お前が噂の『画家』か!」
「……え?」