第30章 ささやかな代償
「ぅわっ、ゲルガーさんも!」
ナナバさんの白くて細長い指が離れていくのと同時に、今度は節くれだった大きな手が伸びてきて、ワシャワシャと頭をかき回された。がははっ、と聞き慣れた豪快な笑い声が降ってくる。
「こうやってラウラも、いつの間にか先輩になっていくんだねぇ」
うりうり、とゲルガーさんになで回されている私の姿を見ながら、ナナバさんがしみじみと笑う。
そんなナナバさんの顔を見上げながら私も思ったのだった。
(…ナナバさん達が私にしてくれた事を、今度は私がエレンにしている。そっか、これが先輩になるということなんだなぁ)
ナナバさんの優しい視線とゲルガーさんの大きくて暖かい手の心地良さに、私は幸せな気持ちで目を閉じた。