第30章 ささやかな代償
「…私も、弟みたいに思ってるよ」
ストン、と腑に落ちた私は、エレンの頭に手を伸ばしてポンポンと撫でた。
やっと理解した、エレンを気にしてしまう理由を。監視対象だからとかそんなの関係ない。本当に単純な理由だった。「何となく似てる」というより「弟と同じだ」と思ってしまったんだ。まるで弟がそこにいるみたいに。
私に頭を撫でられて、ちょっとこそばゆそうな表情をしながらエレンは瞳を閉じていた。拒否することはなく、されるがままになっている。
「ねぇ、なんだかものすごく可愛い子達がいるよ」
「マジだ。おい、そんなに可愛いと、二人まとめて連れてっちまうぞ」
その声にはっとして振り返った時、私の頭にもふわりと手が置かれた。
「ナナバさん!」
そこには白い肌に見事な金髪をした兵士が、非の打ち所のない美しい微笑みを浮かべて立っていた。あまりにも凛々しい姿なので、一瞬王子様かと思った。