第28章 旧調査兵団本部
「それでねエレン!」
頬を上気させた分隊長が身を乗り出す。やっぱり、いつものように夢中になってしまっていて、エレンがうんざりしているのには気付いていないようだ。
ビクッと身体を引いたエレンを見て、私は思わずドアノブに手をかけた。
さっきはつい置いてきてしまったけど、さすがにもう助けてあげた方がいいだろう。エレンも疲れているだろうし、早く休ませてあげよう…。
だけど、その手に兵長の手が重なった。
「!」
驚いて顔を上げると、兵長は小さく顔を振っていた。
「自分で聞いたんだから、最後まで責任を持って聞かせておけ。ハンジに巨人の話を振ってはいけない、という事を身を持って学ぶだろう」
「そうですよね……」
確かに兵長の仰る通りだ。そうやって、失敗しながら、新兵は成長していくものなのだ。
私だって色んな失敗をしてきた。あの発言はマズかったな…とか、あれはこうするべきだった…とか。その失敗のおかげで、今の自分がある。
だけど…それにしたって、今回はちょっと可哀想じゃないだろうか…。だって、多分このままだと夜通しハンジ分隊長の話を聞かされることになる。
ちょっとした失敗にしては、代償が大きすぎるような気が…。