第28章 旧調査兵団本部
案の定兵長は怪訝な表情をして、スープをすくっていたスプーンを置くと、こちらに歩いてきた。
「大丈夫か?様子がおかしいが…」
「いえ、だ、だだだ大丈夫ですっ」
「そうは見えねぇが」
グイッと兵長が顔を寄せてきたので、私はどういう顔をしたらいいのか分からなくなって硬直してしまった。
おかしい…意識してなかった頃は、これぐらいの距離何ともなかったのに。むしろ壁外調査の時なんかは抱え上げてもらうこともあるから、身体が近いというかくっついていることすらあったのに。
自分が今どんな顔をしているのかは分からないが、多分変な顔になっていることは間違いないだろう。
へばりつくように窓枠にもたれかかっている私の顔を、兵長はまじまじと覗きこんできた。
兵長は小柄だが、それでも私より数センチは身長が高い。絶妙に、目線が高いのだ。
すぐ目の前には兵長の顔。小さくて整った顔が、吐息が頬にかかってしまいそうなほどに近くにある。それこそ…ちょっと動いたら唇が触れてしまいそうなくらいの距離に……。
そんなことを思い浮かべた途端、私の頭のどこかの部分で「パンッ」と何かが弾ける音がしたような気がした。一瞬の暗転。
どうやら私の脳は、キャパシティを超えてしまったらしい。