第28章 旧調査兵団本部
「いただきます」
きちんと挨拶をしてから、兵長は食べ始めた。
こういう姿を見ると、兵長は見た目と中身に大きなギャップがあると感じてしまう。時々言葉遣いが可愛いのも、私は結構好きだ。
好き、と言えば…。
はっと私は気付いた。
そうだ。この間、兵長への気持ちをやっと自覚したんだった。私は兵長のことが好き…。
そう思ったら、今部屋に二人きりでいることを急に意識し始めてしまって、緊張してきてしまった。今までにもアトリエで二人きりになることはたくさんあったのに…。
狭い部屋の中では、兵長との距離が物理的に近い。先ほどからドキドキと高鳴り始めた胸の音が聞こえてしまわないかと、私は心配になってきた。
できるだけ兵長から距離を取るため、私はスススと窓際の方へと後ずさる。
自分ではごく自然に見えるように頑張ったつもりだったが、兵長はそれを見逃さなかった。
「どうした?」
兵長の目がジロリと私をとらえる。その瞳に自分の姿が写っているのかと想像したら、私の顔は燃えるように熱くなった。
「えっ、いえ…あー…、き、今日は、月が良く見えるなぁーと思って…あはは」
そう言って私は、窓から夜空を見上げた。
…いくらなんでも不自然だったろうか?だが誤魔化そうとすればするほど、何だか自分の行動がヘンテコなことになっていってしまうのだ。