第28章 旧調査兵団本部
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温め直したスープやパンなどを持って、兵長の部屋の前に立つ。ノックをしたいが、食事の乗った盆を持っているため、両手がふさがっていてできない。
どうしたものかと思っていたら、ドアがひとりでに開いた…訳ではなく、兵長が中から開けてくれたのだった。
「わざわざすまないな」
そのまま兵長が扉を押さえていてくれたので、私は無事に食事を運ぶことができた。
兵長はぶっきらぼうに見えて、意外とこういうジェントルマンなところがある。
女性兵士だからといって甘やかすことは無いが、兵長なりに配慮しているということは、多分みんな気づいているだろう。
そんな人柄だから、兵長は、兵士達から慕われているのだ。
部屋には簡易ベッドと、小さなテーブルと椅子が一脚あるだけで、ガランと殺風景だった。今日到着したばかりなのだから当然なのだが。
テーブルの上に置かれたランプが、ゆらゆらとオレンジ色の光を揺らしている。
私は、食事の乗った盆をテーブルに置いた。一緒に持ってきたポットには、紅茶が淹れてある。