第28章 旧調査兵団本部
一瞬、テーブル内が凍りついたのが分かった。実は私もちょっと動きが止まってしまった。
私も実験の話をしようとはしていたけど、切り出し方にコツがあるのだ。あんなドストレートに聞いたりなんかしたら……
「あぁ、やっぱり。聞きたそうな顔してると思った…」
ニタリと笑ったハンジ分隊長に、エレンは不思議そうな顔をして首をかしげる。それを小突くオルオ。
ガタン、ガタンと、誰からともなく席を立ち始めるリヴァイ班の面々。
チラリと分隊長の顔を見たら、その目は完全に据わってしまっていた…。
ごめんエレン…と心の中で謝りながら、皆に続いて私も部屋から出て行ったのだった。
廊下に出ると兵長が壁にもたれて立っていた。その姿を見て私は、先ほどの食事の時兵長が召し上がっていなかった事を思い出す。
「お食事をお部屋にお持ちしましょうか?」
「…あぁ。すまない、頼む」
そう申し出ると兵長はこくりと頷いてから、歩いて行ってしまった。もしかして、私の事を待っていたのだろうか?
兵長は私の前でなら食事を召し上がる。それが何故なのかは分からないけれど、私は少し嬉しいのだった。兵長にとって自分が、ほんのちょっとは特別であるような気がするからかもしれない。
きっと兵長にとって私はただの部下の一人でしかないのだろうけど、少しでも頼りにしてもらえているのだとしたら、とても嬉しいことだ。
そんなことを考えながら、私は早足になりながら調理場へと向かったのだった。