第28章 旧調査兵団本部
古城に到着したのは昼の少し前ぐらいだったが、ひとまず掃除が終わったのはすでに日が沈みかけている時分だった。
ピカピカになった食堂に兵長は入ってくると、カタンと端のイスを引いて腰掛けた。
傍目にはその表情の変化は分かりにくいけど、結構機嫌が良さそうだ。どうやら満足のいく掃除が出来たらしい。私はホッとした。
「兵長、お疲れ様です」
席に着いた兵長の前に、私はすぐさま紅茶を注いだカップを差し出した。
「あぁ、すまない」
独特の持ち方でカップを口元に運んだ兵長は、一口飲むと、横で控えていた私の方を見て「悪くない」と頷いた。
兵長に続いて他の面々も、各自の持ち場から戻ってきて席へと着いた。皆、半日以上続いた掃除に、さすがにヘトヘトに疲れた様子だった。
兵長の指揮の下行われる掃除というのは、実は訓練よりも疲れたりする。
そんなみんなにも、私は次々と紅茶を用意して回った。
「ありがとう、ラウラ」
「すまないな」
紅茶を受け取ってエルドさんとグンタさんが微笑む。
「あっ、すみません!ラウラさんにやらせてしまって」
新兵であるエレンは、先輩の私にお茶を淹れさせてしまったことを気にしたようで、慌てて駆け寄ってきた。
「いいよ。エレンもお疲れ様」
申し訳なさそうにこうべを垂れるエレンを見て、私は何だか懐かしいような寂しいような気持ちになる。
(あの子も、よくこうやって手伝いをしてくれたっけ…)
どうしても、弟とエレンの姿が重なってしまうのだった。