第28章 旧調査兵団本部
だけど、同じくオルオの行動に気付いたペトラは、眉を寄せてため息をついたのだった。
「も~、何やってんのよアイツは」
私は苦笑する。
「あはは……あっ!」
そんなことを後方で話しているうちに、オルオが舌を噛んでしまったらしく、ちょっと考えられないくらい大げさに鮮血が吹き上がった。
隣で見ていたエレンは、驚きで引きつったような顔をしている。
そりゃ驚くだろう…。私はすっかり見慣れたけど、オルオはよく盛大に舌を噛む。ペトラいわく、それは子どもの頃からの癖らしい。
「…ホント恥ずかしい…」
ペトラはさらに大きなため息をついて、呆れたように首を横に振ったのだった。
……
オルオの流血というアクシデントはあったものの、予定通り森の中を進んで行くと、木の間から旧調査兵団本部の建物が徐々に姿を現してきた。
「うわぁ、思った以上に大きい」
城の敷地内に荷馬車を乗り入れた私は、荷台から飛び降りて古城を見上げた。そびえ立つ城に、思わず感嘆の声が上がってしまう。
古城を改装したというその建物は、所々が傷んでいるせいでお世辞にも「美しい」とは言えなかったが、かつて高貴な者たちが住まったという趣は十分に残している重厚な佇まいだった。
「ラウラ、来い」
兵長に呼ばれて、私はエルドさんとグンタさんと一緒に兵長の後に続いた。