第27章 巨人になれる少年
そこでガチャリと部屋の扉が開いて、エルヴィン団長とエレンが入って来た。
見ると、手枷は外されていたもののエレンの顔は赤く腫れていた。唇の端が切れ血がにじんでいて痛々しい。
着ているシャツもグシャグシャに乱れているし、服の所々にできた血のシミが、彼の姿をより一層悲壮なものに見せていた。
だけど何だか…違和感がある。さっき見たよりも傷が減ってはいないだろうか?
…あれだけ兵長に蹴られたんだから、もっと酷い顔をしているかと思ったんだけど…。
きっと酷く腫れ上がってきている頃だろうと思って私は水で冷やした布を用意していたのだが、それほど怪我は酷くないようだった。
思いっきり蹴っているように見えたけど、やはり兵長は上手く加減をしていたのだろうか?
…きっとそうだ。だって人類最強の兵士に力いっぱい蹴られたりしたら、首なんか簡単にちぎれ飛んでいってしまいそうだ…。
そんな想像をして、私は一人でブルッと肩を震わせたのだった。
とは言え、やはり手当は必要だ。
「これで冷やすといいよ」
ソファに腰掛けたエレンに、私は濡れた布を差し出した。