第27章 巨人になれる少年
見張りの兵士からハンジ分隊長が鍵を受け取って、何重にも鍵のかけられた檻の扉をゆっくりと開く。
まさに、猛獣を檻から出す時のような感じだった。
だけど物々しい扱いを受けた割には、中から出てきたのは平均的な体格をした、至って普通の少年だった。
かなり目鼻立ちの整った顔をしていたが、それ以外ではどこにでもいる普通の新兵とそう大きな違いは無いように見えた。
まだまだ幼さの残る、普通の15歳の少年だ。
一体どんな少年なのだろうと、色々と怖い想像を巡らせていた私にとって、エレンのその姿はあまりにも拍子抜けするものだった。
だからこそ、後ろ手にかけられた手錠への違和感が大きく、余計に痛々しく感じられた。
審議室へ向かう道すがら、ハンジ分隊長が簡単に自己紹介をして、恒例になっているミケ分隊長の匂いチェックも終わると、順番的に私も自己紹介をする事になった。
「…ラウラ・ローザモンドです。私は平兵士だけど、記録係として同行しています」
拍子抜けして緊張が緩んだせいか、意外と普通に話すことができた。
軽く頭を下げれば、エレンは少しホッとしたような表情を浮かべて、私と同じように頭を下げてきた。
私の前に自己紹介をした二人があまりにも強烈なキャラクターだったせいで、面食らっていたのだろう。
こわばっていた表情を少し緩めたその顔は、雨の日に捨てられた子犬を思わせた。
(この子が、本当に巨人に?)
無意識のうちに、父を食いちぎった巨人の姿と重ね合わせてしまっていた私は、エレンの整った顔を見つめながら、何だかよく分からなくなってきてしまった。