第27章 巨人になれる少年
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兵長に突然抱きしめられた後は、もう何が何だか分からなくなってしまった。
兵長の硬い腹筋に顔を押し付けられた時、自分が泣いているのだということに気がつき、真っ先に思ったのは「このままだと兵長の服を汚してしまう」という事だった。
反射的に離れようとしたけど、がっちりと回された腕からはどうやっても抜け出せそうになかった。
だけどそれよりも困ったのは…あろうことかこのまま兵長から離れたくないと思ってしまった事だった。
そんな事を思った自分に驚いた。
でもそれを客観的に分析できるような冷静さは、その時の私には無かった。
兵長の体温や鼓動がじんわりと伝わってくる。
その温もりの中にいるとすごく安心してきて、気づいたら私は声を上げて泣いていた。
誰かの前でこんな風に泣くのなんて、赤ん坊の時以来かもしれないと思った。私は昔から声を上げずに泣く子どもだったから、いつも静かに泣いていた。
だから、タガが外れたように泣き始めた自分に、自分自身が一番びっくりしたのだ。こんな激しさが自分にあったのかと。
兵長の手が頭を撫でているのを感じる。
顔を押し当てた兵長のシャツからは、ほんのりと石鹸の香りがした。