第27章 巨人になれる少年
その泣き顔を見た瞬間、俺の頭は真っ白になり、反射的に身体が動いていた。
椅子に座るラウラに駆け寄って、その細い腕を引く。
羽のように軽い小柄な身体は、容易く腕の中に倒れ込んできて、俺はそれを強く抱きしめた。
ただただ泣き止んで欲しかった。子どものように泣くラウラの事が、可哀想だと思った。
「兵長…?」
一瞬の出来事に驚いたのか、涙で潤んだ瞳を大きく見開いてラウラが見上げてくる。
だがそんな事は気にせず、俺はラウラの頭を掴んで自分の腹に押し付けた。
ラウラの身体が硬直するのを感じたが、構わずに抱きしめ続ける。小せぇ身体だ。少し腕に力を込めれば容易く壊れてしまいそうなほどに。
「ガキが…、声を押し殺して泣くんじゃねぇ」
そう言うと、ラウラの身体からは次第に力が抜けていき、ブルブルと肩が揺れ始めた。
ズズッと鼻をすする音が聞こえて、ラウラが再度泣き始めたことが分かった。
鼻をすする音が部屋に小さく響く。
俺はラウラの頭を何度も何度も撫ぜてやった。まるで母親が子どもをあやすようにして。こんな事をしたのは初めてだ。
「泣きたい時は思い切り泣けばいい。俺が側にいてやる」
その途端ラウラの肩が一際大きく震えて、その後は堰を切ったように声を上げて泣き始めた。
その悲痛な慟哭は俺の鼓膜と胸を震わせて、不覚にも俺の目からも涙がこぼれそうになった。
俺の背中にすがりつくように回された腕。その感触を感じながら、俺は心底思ったのだった。
コイツのことが愛おしい、と。