第4章 ハンジ分隊長
対人格闘術の成績は、当初は絶望的なものだった。
今まで絵筆のような軽いものばかり握っていたから気付かなかったけれど、私はかなり貧弱な部類に入る人間だということが分かった。
持って生まれた体格というものは仕方ないが…それでも嫌なものは嫌だ。
きっと、兵士を目指さなければ、女なのだし別に格闘術が強くなくても困ることは無かっただろう。母さんのように、穏やかに家庭を守る分には何も問題は無かったはずだ。
だけど私は兵士になることを目指した。強くなければ、兵士とは言えない。
だからもっともっと鍛錬を積んで、一端の兵士になれるように努力しなければならない。
だが何も、単純に力では適わない男性兵士や、自分よりも体格の良い女性兵士に真正面から勝負を挑むことはないのではないかと、ある時から私は気がついた。
周りを見渡してみれば、女性兵士であっても対人格闘術の成績の良い子はいた。
そこで私は、そういう子の動きを徹底的に分析して、マネをした。
最後には力がモノを言う科目かもしれないけれど、力の弱い女兵士にだって開ける道はあるはずだと信じて。
多分もともとが几帳面な性格なのだろうけど、私は自分の考察や理論を、図解も交えながらノートにまとめていった。 こつこつと描き足していって、そのノートがいっぱいになる頃には、自分を投げ飛ばしていた相手に勝つこともできるようになっていた。
もちろんいつも勝てる訳ではないけれど、3回中1回ないしは2回は勝てるようになった。
考察ノートを作る上で、座学の講義は非常にためになった。
文章のまとめ方や、分かりやすい図解の方法…。考察ノートとはつまり、対人格闘術の参考書みたいなものを目指したものだ。
座学で使う教科書は、参考書を作ろうとしている私にとっては、参考書の参考書みたいなものだったので、すごく手本になったのだった。