第4章 ハンジ分隊長
だから私はますます絵にのめり込んでいったのだった。
訓練兵になって、本当に僅かだが給料がもらえるようになり、そのお金のほとんど全てを私は画材道具につぎ込んでいた。
場所を取る上にニオイもある油絵はできなかったけれど、その代わりに水彩画などを描くようになった。
もちろんスケッチブックへのデッサンもたくさんした。全てのページを使ってしまったスケッチブックは、保管しきれないので捨てざるを得なかったのが、残念でならない。
だけど、実家から唯一持ち出すことのできたスケッチブックだけは、当然のことながら捨てずに取っておいた。
このスケッチブックは特別なものだから、練習用には使わない。何か特別な絵を描く時にだけ使うことにしていた。
暇さえあれば絵を描いて過ごした。
昔からそうだったが、絵を描いている間は周りのことは一切気にならなくなる。というか、集中しすぎて音が聞こえなくなってしまうのだ。
自分が一人ぼっちだという残酷な現実をつきつけられずに済む分、これは特技と言ってもよかったが、多分この高い集中力のせいで周囲の子たちはますます近寄りにくくなり、私の孤立を助長させる一因になっていたのかもしれない。
でも、入団した時から孤立気味だったのだ。
途中で何かを少し変えたところで状況は変わらないだろうし、入団して数週間も経てば、すでに私の立ち位置というものは固まりつつあるように思った。