第26章 兵長のおまじない
ヘルゲの言葉に、それもそうだと、私は改めて思った。
確かに私たちは入団してから約2年が経過しており、死亡率の高い調査兵団の中では長く生き残っている部類に入ってきている。中堅とまではいかなくても、新兵とはもう言えない。
「生きて帰って初めて一人前」。兵長がよく仰っている調査兵団の通説だ。その理論で言えば、私たちはとっくに一人前になっているということになる。
「それに、もうすぐ次の新兵が入ってくるんだし、少しは先輩らしくならないと!あっ、そう言えば104期生からじゃないですか?ラウラさんの挿絵が入った教本を使ってるのって」
ヘルゲの言葉を引き継いでミアが言う。
彼らは申し合わせたように交互に話す。よほど仲が良いのだろう。いつも呼吸がぴったりだ。
「あー、そう言えばそうかも。うわぁ、なんか不思議な感じ」
彼女にそう言われて、私はしみじみと思った。時が経つのはなんて早いんだろう。
挿絵の制作を依頼されて、必死になってアトリエで描いていたのがついこの間のことのように感じる。