第26章 兵長のおまじない
絵に没頭するあまり、人付き合いに頓着してこなかった私は、自ら壁を作って同期達との交流を遮断してしまっていた。
誰からも話しかけられないので、てっきり嫌われているのだと勝手に思い込んでいたのだ。
しかしそれはとんでもない勘違いであり、私がただ一方的に仲間との交流を拒んでいただけだった。
長きに渡って勘違いを続けてきた私だったが、ヘルゲとミアが声をかけてくれたおかげで、やっとそれが自分の思い違いであることに気付くことができたのだった。
訓練兵時代から合わせると、約4年もの間勘違いをしていたことになり、それが分かった時ほど自分のことを阿呆だと思ったことはない。
ふと私は、二人の手足に包帯が巻かれていることに気がついた。
「えっ!怪我したの?!」
私はびっくりして、思わず声を上げてしまった。
「あっ、いえいえ、ほんのかすり傷ですよ。傷口が化膿するのを防ぐために、日中はこうして包帯でガードしているだけですから」
「大したことありませんよ」
そう言って笑う二人を見て、私はとりあえずはホッと胸をなでおろした。
「それなら良かった。だけど無理だけはしないで、周りの先輩や仲間にも頼るんだよ?」
「はい、ご心配ありがとうございます。でも、俺たちも調査兵団に入って2年経ちますし、もう若手とは言えなくなってきましたから。しっかりしないと」