第26章 兵長のおまじない
巨人を捕獲したその日から、ハンジ分隊長の熱心な研究が開始された。
私には「とにかく、見たものをなるべくたくさん描くように」との指示が出されて、私はこの上なくのびのびと絵画制作に没頭することができていた。
だって、何を描いてもいい、どれだけ描いてもいいなんて楽しすぎる。
こんな状況で「楽しい」なんて不謹慎だけど、絵画製作の側面だけで言えば最高だ。
ハンジ分隊長が様々な検証をしている横で、私はひたすらに絵を描いた。
巨人研究所には、研究員の兵士以外はあまり近寄らない。なんと言っても本物の巨人がいるのだし、拘束されているとは言え全く危険が無い訳ではないからだ。
それに、陣頭指揮を取っているハンジ分隊長は、調査兵団の中でも随一の変人と名高い。巨人がいるいない以前に、巨人研究班は兵士達の間で少し敬遠されているのだった。
だから、ここを一般兵士が訪ねてくるのはとても珍しい。それでなくても今は、トロスト区奪還作戦で犠牲になった兵士の遺体収容作業で忙しいのだから。