第26章 兵長のおまじない
「通常種も奇行種も欲しいですね。比較してみると、色々なデータが取れて面白いと思います」
「さっすがラウラ!分かってるぅ~!それじゃあさ、あそこでジャンプしてる子はどうかな??」
そう言ってハンジ分隊長が指さした先には、ひたすらにグルグルと円を描くように走り回っている巨人の姿があった。壁上の私達には目もくれない。
おそらく6~7m級だろうが、ヨダレを垂らしながら一心不乱に走っている様子から、奇行種であることは明らかだった。
「そう…ですね。すごく…イイと思います」
私の立っている場所からあの巨人までは、数十メートルは離れている。
だけど私は、その姿を見た瞬間、胸の奥から激しい衝動が沸き起こってくるような感じがした。どうしよう、あの巨人から目が離せない。
すると、突然スッと視界が暗くなった。
何も見えなくなったことで、私は何とか正気を取り戻す。
「はっ!危ない危ない!またスイッチ入るところだった…」
「まったくだ…てめぇ、その癖なんとかならねぇのか」
「すいません兵長…って、え??!」
私の視界を遮っていたもの、それは兵長の両手だった。
私よりも少し背の高い兵長が、後ろから覆いかぶさるようにして私の両目を覆い隠していた。まるで、恋人同士が「だーれだ?」とやるかのように。
驚く私と対照的に、兵長は至って冷静な顔をしている。
「ブハッwww!!リヴァイ、あんた何やってんの??」
すかさずハンジ分隊長が吹き出す。兵長の行動がよほど面白かったらしい。
「あ?むしろてめぇこそ何をしている。今、コイツに奇行種を見るように言ったりなんかしたら、こうなることは明らかだろうが。気をつけやがれ」
「あははは!!あぁ、うん、そうだったね。ごめん、気をつけるよ」
笑い声を上げる合間に、ひいひい言いながらハンジ分隊長は返事をしたのだった。