第26章 兵長のおまじない
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夜が明けた。
私は夜間の見張り当番が終わった後、また少し仮眠を取って明け方頃には起床した。
朝食を兼ねたミーティングで、各班にはエルヴィン団長より本日の役割についての指示が出された。
本日の掃討作戦の大まかな流れは、巨人達をまず壁におびき寄せて榴弾で始末し、壁に近寄ってこない個体(大体は奇行種だと思われる)のみ、立体機動で直接討伐する事となっている。
その討伐隊にはリヴァイ班はもちろんのこと、ハンジ班も加わっていた。
そしてハンジ班にはもう一つ、重要な任務が与えられていた。それは巨人の捕獲だ。
昨日の夜、ハンジ分隊長が急ピッチで捕獲作戦を立案して、それを団長が承認したのだ。
今回の捕獲作戦に反対する者は一人もいなかった。
それもそうだろう。何しろトロスト区内に閉じ込めた巨人達は、すでに檻に入れられたも同然の状態だからだ。
十分に注意を払えば、壁外で捕獲するより断然簡単に済む上に、ハンジ分隊長好みの巨人を選びたい放題だ。
作戦に不安は無い。むしろ心配なのは、私の方だ。
ハンジ分隊長はきっと奇行種も捕まえたがるだろう。私だって欲しい。
だけど、私は通常種までなら何とか我慢できるけれど、奇行種を前にするとタガが外れたように絵に没頭してしまうので、正直自分でもどうなるか分からないのだ。
本能的に危険か安全かの状況判断をしているから、巨人の目の前でスケッチブックを開いてしまうことはさすがに無いと思うけど…。
そう、私は壁外だろうが壁内だろうが、巨人の絵を描き始めると周りが見えなくなるほど没頭してしまう癖があるのだ。
日頃みっちりと班の先輩方に鍛えられているおかげで、絵に没頭していても巨人の攻撃をかわす行動だけは取れている。だからこそ、今日まで生き延びてこられた訳だが…。
あとは、兵長のおかげだろう。兵長が守って下さらなければ、私は自分でも気づかない内に巨人に食べられていた。
巨人の胃袋の中でも絵を描き続けていそうなので、我ながらゾッとする。
いい加減この悪癖を直さなければいけない…。