第26章 兵長のおまじない
私たちはすぐさま飛び出したけど、数十メートル離れたあの場所まではすぐには到達できない。
間に合わない…!!
そう思った時、巨人たちの上空からまるで閃光が走るように落下してきたものが見えた。
「リ、リヴァイ兵長っ!!」
兵長はあっという間に、大型の巨人を2体討伐してしまった。それはあまりにも一瞬の出来事であった。
何とか到達した私達は、巨人のように蒸気を上げながら倒れている少年と、それを支える二人の兵士のもとへと駆け寄った。
…私の見間違いでなければ、倒れているこの少年は、「エレン」と呼ばれた謎の巨人のうなじから出てきた。
一体どういうことなんだ。本当にもう、何一つ理解できることがない。
「とにかく壁上に避難を!!」
倒れている彼の身体に手を伸ばして、私はあることに気が付いた。
この少年は、今朝方出発の時に沿道で見ていた訓練兵ではなかったか?
…そうだ。横にいる金髪の小柄な兵士(多分男性兵士だと思うけど、自信がない…)と、黒髪の女性兵士も、彼と一緒にいた!!間違いない!!
私の頭の中で、今朝の光景がありありとよみがえってくる。脳裏に浮かんだ光景の中に、彼ら3人の姿が確かにあった。
「ラウラ!!君はここに残って、彼らの介抱をしてやってくれ!追っ付けエルヴィンが到着するだろうから、今あったことを報告するんだ!他の者は私と一緒に来い!!」
ハンジ分隊長が指示を出す。
はい!と返事をしようとして分隊長の顔を見上げた時、私は思わずギョッとしてしまった。分隊長の顔には子どものような笑みが浮かんでいたからだ。
「ぶ、分隊長…?!」
「フ、フフフフフ!!壁の穴は塞がれた!つまり…!今!巨人のみんなは、大きな籠の中にいるってことじゃあないかー!これは…巨人捕獲の大チャーンス!!!」
不気味な笑い声を高々と上げて、分隊長は走っていった。
「ぶ!分隊長―っ!!」
それをモブリット副長と班の先輩達が青い顔をして追いかけていったのだった。