第26章 兵長のおまじない
「オオオオオォォ!!!!」
謎の巨人が雄叫びを上げた。混乱のさ中、彼はいつの間にか穴の目の前にまで到達していた。
「お、おいおいおい…?!まさか…あの岩を…」
私の隣に立つケイジさんが声を上げる。
「アアアアアァァ!!!」
ドオオオン、と地面が揺れた。
ミシミシと壁が音を立てて、空気を震わせた。
信じがたいことに、巨人が大岩で壁の穴を塞いでしまったのだった。
穴を塞ぐのとほぼ同時に、「いけえぇぇエレン!!」という雄叫びを聞いた。
状況は分からないことだらけだ。だけどただ一つだけ確信したことがある。穴を塞いだあの巨人こそが、「エレン」だという事だ。
地面に座り込んでいるリコさんが、黄色の煙弾を打ち上げる。作戦成功の合図だ。やはり、これは何らかの意図を持って行われていたことだったらしい。
穴を塞ぎ終えると、「エレン」は力尽きたようにその場にくずおれて動かなくなった。身体からは大量の蒸気が上がっている。
しかし彼らのもとには、引き寄せられるようにして巨人たちが歩いていく。
「まずいっ!囲まれている!!救援に向かうよっ!!」
あまりにも想像を超える出来事の連続で私はただただ立ち尽くしてしまっていたが、こんな状況でもハンジ分隊長はすぐさま指示を出して班員を鼓舞した。
やっぱりこの人はすごい。なんて思っている場合じゃないんだけど、それでもやっぱり思ってしまう。