第26章 兵長のおまじない
「……!!!」
叫び声を上げる間もなく、私のすぐ真横を、岩を担いだ巨人が歩いていく振動を感じた。
「…っ!!何なの?!これは…どうしたら…っ?!!」
私はもう、混乱して何が何だか分からなくなってきた。
何をすればいい?誰を守ればいい?兵士たちが命を賭して戦っているのは、何のため?まさか、この謎の巨人を守るためだと言うの?
「ラウラっ!!落ち着くんだ!!とりあえず建物の上に退避だっ!!」
ハンジ分隊長が叫ぶ。1拍遅れてモブリット副長も声を上げた。二人の声のおかげで私の身体は反射的に動いて、屋根に向かって飛び上がったのだった。
建物の屋根に退避した私たちは、眼下を見下ろした。
そこには巨人に食い荒らされた兵士たちの無残な遺体が散乱していた。もう…、誰ひとり生きている兵士はいなかった。
続いて私は、岩を担いだ謎の巨人を見る。よく見たら、あの巨人の前にも兵士が二人走っていた。
彼らの行く手を阻むように、他の兵士を食っていた15m級程の巨人が手を伸ばす。
だが、立体機動で突っ込んでいった兵士が、奴の片目を潰した。遠目からでもよく分かった。あれはリコ班長だ。
視界を奪われて巨人の動きが一瞬止まったのを見逃さず、地面を走っていた兵士の一人が目にも止まらぬ速さで立体機動で飛び上がり、巨人のうなじを削り取ったのだった。
その身のこなしは素晴らしく、かなりの精鋭であると思われた。