第26章 兵長のおまじない
壁がどんどんと近づいてくるにつれて、より明瞭に見えてくるぽっかりと開いた大きな穴。
先行して援護に回ったリヴァイ班が壁の周辺の巨人を片付けてくれたおかげで、私達ハンジ班は穴から壁の中に入ることができた。
ぽっかりとあいた穴を馬で駆け抜けると、中には地獄のような光景が広がっていた。
5年前と全く同じように、あちこちには壁の一部だったものと思われる大きなガレキが散乱していて、建物はめちゃくちゃに破壊されていた。
先ほどフラッシュバックしかけて兵長に怒鳴られたばかりなのに、私はまた、過去の光景に引きずり込まれそうになった。
そんな私の隣で、ヒゲゴーグルさんが声を上げる。
「あっ!!な、何をしているんだ?!あれは??!」
その声のおかげで、からくも私は、またとどまることができた。過去の記憶に引きずり込まれずに済んだ。
私達から十数メートル離れた先には複数の巨人の姿があった。しかし彼らは私達には目もくれずに、あるものを追っていた。
「なんで立体機動を使わない?!あんなところを走っていたら、巨人共の格好の餌だっ!」
巨人達が追いかけているもの。それは、地上を走る兵士達だった。
「援護をっ!!」
ハンジ分隊長が叫ぶと同時に、私たちは全速力で馬を駆けさせた。
ここは建物と壁の丁度真ん中で、周りには立体機動のアンカーを刺せるような建物が無いため、馬を使って戦うしかないのだ。