第4章 ハンジ分隊長
今は多少まともな身体つきになったものの、3年前…つまり14歳当時の私は、母親に似て身長は高くないし筋肉も脂肪もつきづらい華奢な体格をしていた。
およそ兵士には向いていないタイプだと言えるだろう。
それは入団前から、開拓地で力仕事をしている時から思っていたけれど、入団して対人格闘術の講義を初めて受けた時に、まさに現実を鼻先に突きつけられたように実感した。
2歳も年下の子にいとも容易く投げ飛ばされて、まるで歯が立たなかったのだ。
ドサッと地面に叩きつけられた背中が、痛いのか熱いのか分からないくらいジンジンと痺れた。
「…っう」
痛みをこらえて、むくりと起き上がった私に、投げ飛ばしてきた相手が申し訳なさそうな顔をして手を差し出してくる。
「ご、ごめんなさい。思った以上に軽かったから…、勢いがつき過ぎました」
「ううん、大丈夫だよ。訓練だもの。こっちこそ、張り合いがなくてごめんね」
差し出された手を取って立ち上がった私は、ちょっと涙が出そうになったけれど、なんとか平静を装って返事をした。
背中の痛みよりも何よりも…顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。ズタズタにされたプライドが痛い。
相手が男の子とはいえ、まさか…2歳も年下の、12歳の子に負けるなんて思ってもみなかった。
「じゃあ、今度はそっちがならず者をやる番だね」
そう言って私は、先ほど彼に投げ飛ばされた拍子に地面に転がった木製のナイフを拾い上げて、ヒョイっと軽く投げた。
「よろしくお願いします」
丁寧すぎるほどのお辞儀をして、彼は受け取ったナイフを構えたのだった。