第4章 ハンジ分隊長
入団式が終わった後は、さっそく調査兵団の兵舎内を掃除する予定になっている。
私は、未だにねっとりと絡み付いてくるような好奇の視線を振り払うようにして、入団式が行われていた講堂を後にした。
同じく掃除に向かう同期達が、私の前後を歩きながらヒソヒソと話しているのが聞こえてくる。
気分は良くないが、こんなことは訓練兵時代から散々経験してきたことだから、もう慣れっこである。
それに、もしかしたら自意識過剰で、私のことを話しているのではないのかもしれない…と期待をかけてみる。
訓練兵団には12歳から志願できるため、ほとんどの子が入団時はその年齢だ。
それ以上の歳になってから入団してくる者もいない訳ではなかったが、限りなく少数であり、ましてや私のように2年も遅れて入団する者などは珍しい部類に入るのだった。
年齢も違う、「巨人の絵を描きたい」などと珍妙な事を言っている…そんな変わり者の私が、他の訓練兵たちと馴染める訳もなかった。
私はいつも皆から少し遠巻きにされていた。
決して嫌われているとか虐められているという訳ではないと思うけれど、いつもヒソヒソと噂話のタネにされていたことは間違いないだろう。
あまり楽しい思い出の無かった3年間。
なのにどうして今、こんなことを思い出すんだろう…。