第24章 あなたの横顔は
「おーい、ラウラ!」
私たちはビクリと肩を揺らして、声のした方を振り返った。別に悪口を言っていた訳ではないけれど、ぺトラに聞かれるには都合の悪い話をしていたから、びっくりしたのだ。
「あ、オルオもいたの?」
私たちの座るベンチまで小走りで寄ってきたペトラは、私の隣に座るオルオを見つけると意外そうな顔をした。
「ラウラと二人で何話してたの?」
「なっ、何だっていいだろっ」
「何怒ってんのよ?」
オルオは決して怒っている訳ではなかったが、突然のご本人登場にこの上なく狼狽していた。だがオルオのそんな様子も、ペトラはそれほど深く考えなかったようだ。
「ってラウラはどうしたの?!なんでバケツ持ってるの?」
「あ、あーこれ?」
私は苦笑いをしながら、バケツを持つに至った経緯を説明したのだった。
「そうなんだ…兵長がそれを」
バケツを持たせてくれたのがリヴァイ兵長だということを知って、ペトラの表情は少し陰った。
そうだ、この表情。私の口からリヴァイ兵長の話題が出ると、ペトラは決まって悲しそうな顔をする。だけど…
「というか、すっごい可愛いね、そのバケツ!兵長が自分で買ってこられたのかな?」
ペトラはすぐに、その顔を隠してしまう。まるで綺麗な布で覆い隠すようにして、いつも明るい笑顔の下に押しやってしまう。
最初の内は私の気のせいかと思っていたけれど、同じことが何度も続けば、さすがに鈍感な私にだって分かる。