第24章 あなたの横顔は
「いや、別に……」
歯切れの悪いオルオに、私は首をかしげる。どう見ても、何か聞きたげだ。
じっとオルオを見つめていると、オルオはその視線に気付いたみたいで、ちょっと困ったように下を向いた。
「どうしたの?…私、誰にも言わないよ。良かったら話してよ」
そう伝えると、俯いていたオルオはチラリと視線を上げて私の顔を見る。灰色の細めの瞳が揺らいでいるのが、手に取るように分かった。
言葉にはならなかったけど、安心して欲しいという思いで、私は頷く。
するとオルオは数回口をパクパクと動かした後、意を決したように言ったのだった。
「ペトラって、兵長のことが好きなんかな…?」
そう言ったオルオの顔はとても悲しそうで、それを見たら私は胸がきゅううと締め付けられるような感じがした。やっぱりオルオはペトラのことが好きなんだ。
…それにしても、なんて苦しそうな顔をするんだろう。オルオのこんな表情は初めて見た。
「えっと…」
なんて答えればいい?正直に言えば、多分ペトラは兵長のことが好きだ。
でもそれを言ったらオルオは悲しむだろう…。これ以上彼に悲しい顔をさせるような言葉を伝えてもいいものだろうか。
「うーん…とても尊敬してる、とは言ってるけど、好きとかそういう話はしたことないから分からないな。…念のため聞くんだけど、オルオの言う「好き」って恋愛的な意味でだよね?」
「ばっ…おまっ、そんなハッキリと…」
「ご、ごめん」
ぷいっと背けたオルオの顔が見る見るうちに赤くなっていくので、笑っては悪いと思いつつ、微笑ましさで思わず顔がにやけてしまいそうになる。