第24章 あなたの横顔は
「あ、でもねオルオ…兵長が普段使用されてるのって、それじゃないんだって。もっと安いやつだって仰ってた」
「な、なにぃっ??!」
ガーン、という効果音が聞こえてきそうなほどガッカリとしたオルオを見て、私は申し訳なくなる。
「ご、ごめんねオルオ…もっと早く教えてあげれば良かったね。で、でもね!私が買ったのはその商品だし、兵長もそれ使ってるから、お揃いなのは間違いないよ!」
若干魂が抜けかけたような表情をしていたオルオだったが、私の一言で息を吹き返したらしい。
まぁ、そんな顔をするのもよく分かる。だって、そのクラバットの値段と言ったら、私たち平兵士がおいそれと出せるような金額ではないからだ。
「お揃い…」
「そうだよ、お揃い!それに、オルオってクラバット似合うよね!」
もうひと押ししてやると、すっかりオルオは元気を取り戻した。
「ふっ、そうだろう。兵長を除いて俺様以上にクラバットの似合う男はいない」
もとの上機嫌に戻って鼻高々に言う姿は、やっぱり可愛い。なんて面白いんだろう。
ニコニコしているオルオは、いつの間にか私の隣に腰掛けていた。
そして何故だか急に真面目な顔になると、辺りをキョロキョロと見回し始める。
「ところでよぉ…ペトラって、お前のところに遊びに行ったりするか?」
「うん、よくアトリエに来てくれるよ」
「ほ、ほぉー…。へ、兵長の話とか、したりすんのか?」
「兵長の?…うーん、たまにするくらいかな。大体は私の絵のことを話したりしてるかなぁ。どうしたの?急に」
オルオがペトラに好意を抱いていることは、実は何となく勘付いていた。
だって普段は皮肉屋なオルオが、ペトラを見るときの眼差しは春の日だまりみたいに柔らかくて温かいから。
本人は無自覚だろうけど、あんな顔をして見つめていたら誰だって気づくはず。
…あ、でも当の本人であるペトラは気づいていないみたいだけど…。
あれ?でも…オルオがペトラを好きで、ペトラは兵長が好きだとすると…うわぁ…。
兵長風に言うと、「これはどういう状況だ」だよ…。全員に幸せになって欲しいけど、どうしたら良いのか私には見当もつかない。