第24章 あなたの横顔は
そんな風にして感傷に浸っていた私の目の前に、ニュッと顔を出してきた人物がいた。
「うわぁっ、オルオっ!」
ボーッと空を見上げていた私を上から覗き込んできたのは、オルオだった。
彼はペトラ同様に、入団時期こそ違えど私と同い年であり、ひねくれ屋なところはあるが、憎めない性格なので仲良くなった。
時折私のアトリエの方にも遊びに来てくれる。
「なんだ、今日は調整日か?こんなところで日向ぼっことは、いいご身分だな」
「オルオも調整日でしょ?一緒にどう?ところで、なんでクラバットつけてるの?」
「ふっ、別にいつも通りだろ…」
オルオの話し方とか表情で、今日は機嫌が良いことが分かった。
ペトラはこの話し方が「腹立つ」と言っているけれど、私は嫌いじゃない。だって何か可愛いし、面白い。
「あっ…ていうかオルオ、そのクラバットってもしかして…」
彼の首元に巻かれた、つやつやとした上等な布を見て、私はハタと思い当たった。もしかしてそれは、私が兵長に贈った高級クラバットと同じ商品ではないだろうか。
「いいところに気がついたな。そうだ、これはあの店で買ったものだ」
オルオと私は以前、兵長への贈り物を探しに一緒に街に繰り出したことがある。その時、兵長行きつけの紳士服店で見つけたのが、これなのだ。
兵長のことを尊敬しているオルオは、憧れゆえに同じものを身に付けたかったのだろう。
この事を知ったらきっとペトラは眉をひそめるだろうけど、やっぱり可愛いと私は思う。だってなんて健気なんだろう。可愛げがあるじゃないか。