第24章 あなたの横顔は
次の日、二日酔いで私の頭がガンガンと割れそうに響いていたのは当然の結末である。
朝、自室で目が覚めて経緯をすぐさま察した私は、兵長の執務室まですっ飛んで行って、何度も頭を下げたのだった。
頭を下げた拍子にリバースしそうになったので、兵長はさすがに呆れたみたいで、小さなバケツをくれた。
どこで買ってきたのだろう、こんな可愛いバケツを。
「てめぇ、今日が調整日で良かったな。中庭ででも休んでろ。床を汚しやがったら、承知しねぇからな」
「はい…申し訳ありませんでした」
私はスゴスゴと部屋から退散し、兵長に言われた通り宿舎の中庭へと向かった。
庭の中央にあるベンチに腰掛け、兵長から渡されたバケツを抱えながらボケーッと空を見上げていると、昨日の出来事がまるで夢であったかのように思えてくる。
全兵団を束ねるザックレー総統に会い、団長や兵長と食事に行き、駐屯兵団のピクシス司令やハンネス隊長、イアン班長、リコ班長と話をした。
私が絵を描いていなかったら、到底会うことなどできなかった方々だ。
ああやって絵を褒めてもらえるのはこの上なく嬉しいことだ。自分が志したものが形になって、誰かのために僅かにでも役に立つことができていることを感じられるから。
(兄さん、見てくれている?私、兄さんとの約束通り、たくさん巨人の絵を描いているよ)
晴れ渡った青空を見上げていると、父と同じ色をした兄のコバルトブルーの瞳が思い出されてくるようで、優しく目を細めて笑う顔が脳裏に浮かんでくるのだった。